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名古屋地方裁判所 昭和33年(わ)393号 判決

被告人 杉山春光 外一二名

主文

一、被告人幸村時重及び同高橋一彦を各懲役壱年に

二、被告人藤川玉三を懲役五月に

三、被告人日比寛、同牧野正市及び同木村清一を各懲役四月に

四、被告人井伊春吉を懲役参月に

五、被告人宮島猛、同梶田要一、同山本金勝、同松井昌道及び同北村政男を各罰金弐万円に処する。

六、右第五項掲記の被告人等において当該罰金を完納できないときは金弐百五拾円を壱日に換算した期間当該被告人を労役場に留置する。

七、被告人幸村時重及び同日比寛につき未決勾留日数中参拾日を右各本刑に算入する。

八、押収にかかる証第一号の現金六百五拾円、同第二号の現金五百円、同第三号の金壼壱個、同第五号のサイコロ参個及び同第二十号の盆ゴザ壱枚はいずれも之を没収する。

九、被告人杉山春光に対する昭和三十三年三月十九日付起訴にかかる賭博開張図利幇助の点は無罪。

理由

(罪となるべき事実)

第一、被告人幸村時重及び同高橋一彦は

(一)  外数名と共謀の上、昭和三十三年二月二十四日名古屋市中村区蘇鉄町五五、稲継義一方において、賭博場を開張し、被告人宮島猛外数十名の賭客を集合せしめて、丁半という方法で賭銭博奕を行わせ、同人等から寺銭名下に金銭を徴収して利を図り

(二)  共謀の上、同月二十五日前記稲継方において、賭博場を開張し、玉川光男外数十名の賭客を集合せしめて、前同様の方法で賭銭博奕を行わせて同人等から寺銭名下に金銭を徴収して利を図り

第二、被告人日比寛は前記(二)記載の日、同(二)記載の場所において、被告人幸村等が同(二)記載の如く賭博場を開張し、玉川光男外数十名に賭銭博奕を行わせ、寺銭を徴収して利を図つた際、同賭博場の木戸の見張をなし、以て被告人幸村等の前記犯行を容易ならしめて幇助し

第三、被告人藤川玉三、同牧野正市、同木村清一及び同井伊春吉は常習として右第二記載の日被告人幸村等の開張せる同博賭場において、玉川光男外数十名と共に丁半という方法で金銭を賭して博奕をなし

第四、被告人宮島猛、同梶田要一、同山本金勝、同松井昌道及び同北村政男は右第二記載の日被告人幸村等の開張せる同賭博場において、玉川光男外数十名と共に丁半という方法で金銭を賭して博奕をなし

たものである。

(証拠)

(判示各事実の証拠略)

なお被告人高橋一彦は昭和三十年九月十三日当地方裁判所において賭博開張罪により懲役八月の言渡をうけ翌三十一年四月十七日確定の上その執行をうけ終り、被告人木村清一は昭和二十五年六月二十七日当地方裁判所において常習賭博罪により懲役四月の言渡をうけ(昭和二十七年四月政令第百十八号減刑令によりその刑を懲役三月に減刑)たが当時病気のためその執行は停止され、病いえてその執行をうけ終つたのは昭和三十年二月三日であるが、以上の点は右被告人両名の当公廷における各供述及び右被告人両名に対する各身上照会に関する照会回答によりいずれも明らかである。

(被告人杉山春光に対する公訴事実は無罪との判断について)

被告人杉山に対する公訴事実の要旨は被告人杉山は昭和三十三年二月二十五日名古屋市中村区蘇鉄町五五、稲継義一方において、被告人幸村等が賭博場を開張し、玉川光男外数十名に賭銭博奕を行わせ寺銭を徴収して利を図つた際、同賭博場において景気をそえるために塩まきの仕事をなし、以て被告人幸村等の右犯行を容易ならしめて幇助したというのである。

よつて案ずるに抑々丁半賭博においては一と六或は二と六の目が出た場合開張図利をなす者が賭銭の幾割かを寺銭として徴収する例のようであるところ、右の目が出ない場がつゞくと縁起のためその目が出るよう塩をまくことがたまたま行われること及び被告人杉山が右賭博場において塩まきをなしたことは証拠上認めうるのであるが、右塩まきは単に縁起のものであつてその行為が直ちに賭博開張図利行為を容易ならしめるもの、即ち本件起訴にかかるような当該犯罪構成要件に該当するものとは到底認めがたい。従つて右公訴事実についてはその証明は不十分なりといわねばならないから、刑事訴訟法第三百三十六条により被告人杉山に対し無罪を言渡す次第である。

(適条)

判示第一の各所為――刑法第百八十六条第二項

更に被告人幸村については同法第二十一条

被告人高橋については同法第五十六条、第五十七条を夫々適用する。

同第二の所為――同法第百八十六条第二項、第六十二条第一項、第六十三条、第六十八条第三号、

同法第二十一条、

同第三の各所為――同法第百八十六条第一項

更に被告人木村については同法第五十六条、第五十七条を適用する。

同第四の各所為――同法第百八十五条本文、罰金等臨時措置法第二条、第三条、刑法第十八条

刑法第十九条第一項第二号第二項本文、

仍つて主文のとおり判決する。

(裁判官 伊藤寅男)

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